学校長からのメッセージ





Message from
President



2002年はReformと
Consolidating the Foundationsが
テーマです



日本音楽学校長

小林 志郎

  
   
2002年度の教育改革の課題



(1) 実習の検討 インテンシブな実習からルーティーンな実習へ

現在、幼稚園実習と保育園実習は2週間プラス10日、施設実習は2週間を課している。学生たちは最初から1−2週間の期間、毎日実習園におもむいて実習を行う。インテンシブに行う実習は大変効果的な体験学習となる。しかし昨今、多くの園からは実習生の資質が低下しているとの評価が多くなった。多くの幼児教育者養成校が誕生し、指導を担当してくださる園側も対応の限界に近づいていると言われる。いきおい、実習生にソーシャル・スキル、体験、基礎知識・技術を持たせてから派遣してほしいという要望が強くなりつつある。

近年、多くの大学等の教員養成機関では、この弱点を補うために、観察実習とか体験実習という授業形態を工夫し、実習を多様化するようになった。本来、観察実習は教員が引率し、幼児の活動や園の先生の指導・ケアーを観察して教員の指導の元で学習するのが目的であり、一定期間に集中して行うのではなく、毎週1回ずつ、長期間にわたって観察を行うことも可能である。本校ではこのような形で実習の前段階を実施する可能性があるかどうか検討を開始した。

またインテンシブな実習を行うと学校のほとんどの授業をその期間停止しなければならない。そこで実習の一部をインテンシブな形態から外し、週に一度、午前中のみの実習を通年で行うプランが可能かどうか検討するよう提案している。もしこれが実現できれば、午前中の2コマの授業をこなすために、週2日は5時限(現行は4時限制)を組み込む必要があろう。



(2)入試の改善

自己推薦入試が全国的にシステム疲労し、形骸化しつつある。

現在、自己推薦入試に応募する学生の8割は、学校推薦の基準点に満たない学生であり、情熱や自己アピール・スキルにも欠けている。受験生の認識の一部に、学業成績に自信がなく、しかも人間的に未熟でもどこかの自己推薦入試なら拾われるかも知れないという不確実な期待がある。日本音楽学校の受験生は多様であり、学業成績が上位の学生も、幼児教育者として未開発であるが優れた資質を持った学生も応募する。1回の論文試験・面接試験では判断できない資質を未開発のまま持っている学生に教育の機会を与えるような選抜を工夫する必要に迫られている。

 本年度の受験生の中に、自己推薦をする意欲やグループ討論でリーダーシップを発揮する学生が時々見られたが、多くは本来の自己推薦入試に挑戦する意図を理解した学生が少なかった。そこで面接の時に自己推薦を行うエネルギーを問う形式を含めて、2次、3次にわたる面接そのものが教育的であると同時に、的確な人物判定が出来る入試に改善する必要がある。

この問題を解決する入試手法として、本校は応募者によっては複数の面接を経て判定に至る試験を実施するためにAO入試の15年度導入を目指している。厳しいが、丁寧で、資質や人格、意識を的確に判断する選抜を行う学校というイメージを伝えることで、自己のアイデンティティを意欲的に表現し、複数の面談を経験して自ら隠れた資質を掘り起こす力を持った受験生が応募してくれることを期待している。現在、来年度からAO(アドミッション・オフィス)入試を導入するための準備を進めている。



(3)表現教育の分析と教育内容・方法の研究

日本音楽学校の教育のアイデンティティを次のような教育方針・方法・評価においている。すなわち「音楽、造形、運動、シアター/ドラマなどの表現に関わる教育を通して高度なコミュニケーション能力を持った保育者の育成」が本校の教育の目標であると内外にアナウンスしている。

 今、FD委員会と教務委員会の両委員会では、音楽、造形、運動の各授業を点検し、以下の点について議論と検証を進めている。

1. 各授業の到達目標は設定されているか。

2. そのプロセスの学習は十分に検証されているか。

3. グレード制、領域拡大型(多領域を部分的に広範囲に展開せざるを得ない授業では、白地図に色を塗り込むようにして、授業内容の展開を表示する)、ディスタント制(授業の進度を距離になぞらえ、進度を図式化して表現する)、エリア・マークシート制(授業内容を比較的単純なマトリックスで表現できる場合は、一つ一つのマスを塗りつぶすようにして、進度を明示する)など多様なプロセス設計が考えられる。各教科目において授業「ピアノ」のグレード制を参考にしつつ、プロセスの再構築をはかるための工夫をできないか。

4. 新しい教授法や学習プロセスが明確になれば教科目間での連携が可能になるのではないか。

5. 各教科目の目標を達成すると、学生はどのような資質能力を獲得できるか。

6. その資質能力は本校卒業生の得意分野として、私たちは積極的にアナウンスする。同時に卒業生の協力のもとに日本音楽学校の教育評価を推進する。



 この課題検討を本年度中に出来る限り前進させ、授業時間の再配分、必要ならば新しい授業科目の設置、または削減を検討しなければならない。この作業はおそらく今年の暮れまでかかるであろう。システムや時間割に直接影響することになるまでには更に半年以上の時間が必要であると考えられる。

 この検討の中間報告では、授業の構造とプロセスの明確化が各授業科目で改善され、教員が授業内容や方法に関して日常的に連携し合う交流が生まれてくることを期待したい。

 FD委員会のもう一つの課題は、教員同士が授業を参観し、啓発し合うシステムを作ることである。教育への情熱は他校以上に高いと評価されているが、更に資質向上を求めるエネルギーを創出するには異質な契機や動機が必要と思われる。FD委員がまず相互に授業を参観し、新しい教育文化を創り出そうと動いている。何かが始まるのではないかと期待している。

平成14年度はあまり多方面に改革を拡散しないで、昨年度の改革を一段と引き締めつつ強固な土台作りを計ると共に、来年度の準備期間とする予定である。




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