オーストラリアのChildcare Centre の認可制度と基準

 





オーストラリアのChildcare Centre の認可制度と基準


キンディー・コーブ園長(サウスウェールズ州レーン・コーブ・カンシル)
元オーストラリア・チャイルドケア・アクレディテイション・カウンシル
(National Childcare Accreditation Council)職員

ミリアム・ゲルバート

訳・補筆 小林 志郎


 私は、小林教授から認可制度と認可制度がチャイルド・ケア・センターにどんな影響を及ぼしているかを学生たちに話すよう依頼されました。



 認可制度は、すべて育児の質を保つためにあるのです。刺激的で、かつ有益な経験を用意し、子どもがどのように学習し成長するかに関して私たちが持っている豊かな基礎知識を活用して、子どもたちの「思考」と「言語」の成長を支援することです。

 「遊び」は学習のツールであるという価値観を認識することです。また、子どもの社会との関わりは彼らの学習の核となることも認識しましょう。人生がスタートした時期、つまり幼少期の経験は子どもの成長に大きな意味を持ちます。

 「ナショナル・チャイルドケア・アクレディテイション・カンシル (National Childcare Accreditation Council)」が指導する「保育資質の改善および許認可システムの制度 (The Quality Improvement and Accreditation System)」は、保育の質に関して明瞭な規準を与え、保育の質を評価するためのフレームワークを用意しています。

 保育資質の改善は恒常的に進められるべきものです。スタッフと親が協働し、センターがいつでも質の高い保育を維持していることを保証しなければなりません。この資質保証システムはイギリス連邦政府によって始められました。厚生公共事業として保育給付金とも結びついています。またファミリー・デイ・ケア・スキーム、放課後ケア・サービスおよびロング・デイ・ケア・センターなどの事業をも包括しています。

 オーストラリアでは、保育資質を保持するためのプログラムは連邦政府から資金を提供されています。したがって、「ロング・デイ・ケア」、「ファミリー・デイ・ケア・スキーム」、そして「放課後ケア・サービス」で働く職員は保育等国家基準資格を獲得しなければならないのです。


 私はオーストラリアでの、ロング・デイ・ケア・センターの認可プロセスについてお話したと思います。認可システム[QIAS]には5つのステップがあります。


ステップ1 登録
ステップ2 「自己評価と努力目標」と「継続的改良の記録」の提出
ステップ3 承認・認可
ステップ4 一次審査
ステップ5 Accreditation認可審査官の訪問


 ロング・デイ・ケアでは、各センターが「リソース・ブック(資料集・手引書)」を参照して提出しなければならない10のクオリティー領域および35の基準があります。


クオリティーエリア 1 子どもとの関係
クオリティーエリア 2 子どもに対する尊敬
クオリティーエリア 3 家族との協力
クオリティーエリア 4 スタッフ相互交流
クオリティーエリア 5 立案および評価
クオリティーエリア 6 努力目標および開発
クオリティーエリア 7 保護と保育
クオリティーエリア 8 健康
クオリティーエリア 9 安全性
クオリティーエリア10 質を保つためのマネジメント


 ここから、みなさんは基準審査の領域がどんなに広いか想像できるでしょう。提出書類を読めば、センターの特徴や改善を必要とする箇所が一目瞭然です。

 センターが要求されたレベルに達するために、「品質プロフィール」は6つの観点から集められたデータを使って各センターで作成しなければなりません。


1. 自己評価と努力目標の報告書20%
2. 認可請求調査書[理事者]10%
3. 認可調査報告書[スタッフ]10%
4. 認可調査報告書[子どもの家族]10%
5. 認可報告書40%
6. 試験格付け10%


 NCAC(National Childcare Accreditation Counscil国立保育認可制度カウンシル)に関するもっと詳細な情報は、ウェブ・サイトwww.ncac.gov.auで閲覧可能です。

 さて、私たちのセンターが認可をクリアしたときのことを少し話させてください。「刺激的」、「活気があり」、「熱心」、「うきうきする」、「ファンタスティック」。これらは、先週、私たちのセンターで2日間の認可調査が終了したとき、認可を審査したアクレディテーション・スタッフがくれたコメントのうちのいくつかを紹介したものです。





 ところで私たちの園は、レーン・コーブ・カンシル直属の管理委員会によって管理・運営されていて、一日に58人の子どもを受け入れています。私たちは、毎日およそ15人のスタッフを使っています。また、センターは1年当たり51週、朝7.30から夕方6.00まで開いています。

 この園のほとんどのスタッフは経験が浅く、就職して9ヶ月に満たない者が多いのです。私はこのセンターに赴任して3ヶ月になります。このセンターでの私の役割は、認可申請(認可のプロセスの一部)のために必要なすべての準備をすることでした。何人かのスタッフは認可申請の仕事の手伝いをした経験がありますが、ほとんどのスタッフはこれまでに審査を受けた経験がありませんでした。

 私は過去10年にわたって認可審査のプロセスに関わってきました。私の前任の園長(キンディー・コーブ保育園長)がスタッフと親から構成されたサブ委員会を既に設立していたので、始動はかなり容易でした。

 各サブ委員会には、委員会を立ち上げ、委員会を仕切る予定の人物が含まれていました。その人たちの中にもやはりアクレディテーションを受けた経験者はごく少数でした。激励や支援を得て、委員会は「10のクオリティー領域」の基準を満たす証を見つける仕事に着手しました。この仕事はそれほど難しい作業には見えないものです。しかしはじめてみると非常にきつい仕事であることをほとんどの人が発見しました。私たちは励まし合い、深夜に及ぶミーティングを積み重ねつつ、この困難な仕事を乗り越える道を進みました。

 以上はアクレディテーションを受けるための準備作業のただ一つの側面です。私たちは恵まれていました。子どもとスタッフの相互交流は最高でした。それは取りも直さず優秀なスタッフを擁しているということにほかなりません。アクレディテーションのための準備作業では、「なぜそういう運営方針なのか」、「なぜそういう保育内容なのか」、「なぜそういう勤務体制なのか」を説明できる明確な証を用意しなければならないのです。

 アクレディテーションは大変有用なものです。なぜその仕事をやっているのかアクレディテーションは問いかけてくれます。アクレディテーションはあなたがその答えを発見するきっかけにもなります。

 さらに、私たちは「新鮮な目」でセンターを客観視しなければなりませんでした。私たちは、センターの物理的な環境、全体のエリアの確認、そしてすべての施設・設備の監査を行い、200%安全であることを確かめました。



 私たちは目標をより理想的なものに発展させるため、親やスタッフから意見・考えを聴取し、分析し、センターの運営方針を練り上げる必要がありました。方針の検討と同時にその方針を実現するためにセンターが採っている手法が今日的であるか、新しい教育研究から遅れをとっていないか調べる必要がありました。もし手法の変更が必要な場合は、親たちからアドバイスを求め、両者が協力してリフォームの作業を遂行してきました。

 私たち保育者は「リフォーム・プログラム」を繰り返し評価し、調節と変更を加えました。常にプログラム改善が弾力的に運用できる方法を捜しました。第一に子どもたちから出来る限り多くの手掛かりを得なければなりません。また「ポートフォリオ」・システム(必要なデータを統計・分析した結果を数字・図形・写真など多様な表現方法でファイリングし、関係者全員に開示するシステム)を徹底するだけでなく、「特別支援カリキュラム」(例えばLD のこどもを対象とするカリキュラムもその一つ)を解説した書類も用意し、配布する必要がありました。

 私たちは「父母との連携」を向上させる方法の改善に努めてきました。できる限り親の参加を求めました。そのため一切を簡単・簡潔にしました。例えば、部屋に張り出される子どもと園のスケジュールをビジュアライズするなどの工夫をしました。

 私たちスタッフは励ましあい、スタッフ間の交流は有用な経験学習であると位置づけています。すべての活動は情熱的に行われ、保育者の現職研修のプログラムの一つ「マルチ・カルチュラル音楽」(multi-cultural puppets, dress-up clothing, dolls, music, and gamesなどの幼児教育が工夫されている。モンテッソリーがマルティ・カルチュラル・クラスを開いていることは有名であるが、多くの国が多文化・多言語化が進む中で積極的にクロス・カルチュラルな教育が研究されてきた。a variety of other activities provided, such as large motor, creative art, music, multi-cultural music, and story. これは米国イリノイ州にある幼児教育研究所Minee Subeeの記事からの抜粋である)と同じように、スタッフの交流によって「教える機会・教わる機会」が何度も生まれました。

 これがすべて終わった時、私たちはみな私たちの環境が「美学的に」美しく見えるよう改善しなければなりませんでした。しかも私たちの方針・原則がはっきり表現され、子どもたちの感覚に直接訴える必要がありました。(たとえば歯のポスターは食堂に張り、日焼け止めの大切さを訴えるポスターは食堂以外の場所に張る、などの工夫です。)
これらの作業が完結すれば、残されているのはそれほど多くありません。





 「クオリティー領域」の資料のほかに、その他のデータや情報を集め、アクレディテーション審査官が保育原則の指針を的確にかつ実証的に評価するために必要な資料を提供できるよう準備をすることです。

 皆さんのご理解の通り、認可は大変なものです。しかし、大変だからこそ素晴らしいものと言えましょう。私たちはセンターの仕事すべてを改めて自問自答しなければなりませんでした。その結果、改善するアイディアや方法を見つけることができました。スタッフは団結し、互いに支援しあうことの重要性を学びました。そして私たちは子どもたちと家族にたいするサービスを改善することができました。













 
  私の長年の友人にMiriam Gelbartという保育園長がいる。彼女はNCAC(National Childcare Accreditation Counscil国立保育認可制度カウンシル)や保育園の園長など多様な経験の持ち主である。かってはDrama in Education(ドラマ教育)に関心を持っていたが、今は押しも押されもしない幼児教育者であり、NCAC(National Childcare Accreditation Counscil国立保育認可制度カウンシル)のスーパーバイザーとして活躍している。彼女は現在、シドニーの近郊のレーン・コーブというところで保育園改革に取り組んでいる。



 この原稿は日本音楽学校の学生に特別講義を依頼したとき、彼女が用意したレジュメを加筆訂正した講義草稿である。講義録であるから、やや説明が薄かったり、教材がないため意味が不鮮明なところがあるのはいなめない。彼女の講義ではアクレディテーションに必要な書類、報告書、写真、地図などが用意されていた。ここでは出来る限り、彼女の資料に近いイメージを再現するように努力した。

 なお、Accreditation とNCAC(National Childcare Accreditation Counscil国立保育認可制度カウンシル)について関心をお持ちの方で、疑問点がありましたら下記までお問い合わせください。小林がNCACの資料やミリアム・ゲルバートの話を参照してお答えします。

 なお必要なら(A4で3,4ページの範囲)日本音楽学校のスタッフが必要な部分を翻訳して差し上げます。(小林 志郎)




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